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FOCUS: クラウドコストの統一規格でコストモニタリングを自動化する

2024-09-19
坂田 駿介
坂田 駿介
コーポレートマネージャー

企業活動において、人員や資金を適切に使うことが重要であることは言うまでもありません。すなわち、コストを何にかけるべきで、何にかけるべきでないかを継続的に観察し、そして意思決定を行うということです。

しかしながら、このような意思決定をするために必要なメトリクスを収集するためには、複雑なシステムを構築する必要がありました。

FinOps Foundationが提唱する FOCUS は、クラウドサービスの利用・支払いデータに統一規格を持ち込み、このような意思決定を簡略化・自動化するために役立ちます。

肥大化するクラウドコスト

近年、クラウドコンピューティングやSaaSの普及により、企業活動のクラウドサービスに対する支出は上昇傾向にあり、これは今後も続いていくトレンドです。

最新の情報では、2024年第二四半期の売上はGCPは前年比+29%、Azureは前年比+19%、AWSは前年比+19%(引用元)と高水準を維持しています。

クラウドコストは、スイッチ一つで利用料金を変更することができるため、非常に流動的なコストであるといえます。人員の採用や外部への発注に比べると、はるかに流動的に制御することができます。だからこそ、しっかりと継続的に監視ができていない場合、大きな無駄を生む可能性もあります。

このように、制御可能かつボリュームも大きいクラウドコストを継続的に監視し、支出をコントロールすることは経営資源の最適分配に対して大きなインパクトがあるのです。

複数サービスを横断してのデータ把握は、信じられないほど複雑

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請求書のフォーマットは各サービスごとにバラバラ

クラウドサービス提供者の発行する使用量データは、独自のフォーマットで記述されています。そのため、複数のクラウドサービスのコスト横断して分析したい場合、データ統合のために複雑なシステムを構築する必要があります。

コスト管理のためにコストが多くかかっているという状況は、本来の目的である「資源の最適配分」という観点では、避けるべき事象です。

クラウドコストの統一企画「FOCUS」

FOCUS (FinOps Open Cost and Usage Specification)は、クラウドのコストと利用料金に関するオープンソースの技術仕様であり、FinOps Foundationが提唱・管理しています。

簡単に言うと、AWS,Azure, GCPをはじめとしたクラウド事業者の発行する請求書の統一フォーマットです。

大手クラウド事業者の他、SaaS事業者など数多くの会社が対応を始めています。

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引用元:https://focus.finops.org/contributing-members/

クラウドサービスの使用量データをFOCUSフォーマットで出力することで、複数サービスを横断したデータ分析がシンプルになり、また一度構築した分析パイプラインに新たなサービスを連携する際にも、追加の工数が圧倒的に小さくなります。

すぐに分析を始められるデータを取得

FOCUSでは、クラウド請求ファイルで使用できる43のカラムが定義されており、各カラムには、一意の名前、ID、説明、およびそのカラムの要件が記載されています。

これにより、複数プラットフォームにまたがる請求データの前処理を行う必要がなくなり、APIなどで取得したデータがそのまま分析可能になりました。

下のダッシュボードはMicrosoft powerBIでFOCUS形式のデータを使ってダッシュボードを構築した事例になります。月次の合計コストはもちろん、サービスカテゴリーやリージョンなどの項目でコストの可視化ができるので、ビジネスにおける意思決定を助けてくれます。

従来の方法では、サービスごとにカテゴリー分けをするとなると、自分で一つずつタグづけを行い集計する必要があるため、かなりの手間がかかっていました。FOCUSではデフォルトで用意されているためタグ付けの工数は0です。

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引用元:https://focus.finops.org/get-started/microsoft/

FOCUSで経営資源の最適分配の自動化を実現

このように、最小限の手間で経営資源の配分の検討材料であるクラウドコストを可視化・分析するためのキーとしてのFOCUSの価値をご理解いただけたかと思います。コミュニティの動きも活発なため、ご紹介したpowerBIのテンプレート以外にも様々なオープンソースのナレッジが用意されています。( FinOps foundationではSQLベースでのユースケースが公開されています。 https://focus.finops.org/use-cases/

今後、FOCUSを活用することで、経営資源の最適な分配を自動化し、さらに効率的な運用を実現できると確信しています。