「ノーコードからローコードへ」Beta 2のアップデートについて : 開発チームからの手紙
私たちはMorphの次世代バージョンのベータ版である Morph Beta 2 を、5月の第二週から一部のユーザー様に順次ロールアウトしています。
今回は、Morph Beta 2で行った変更についてお話したいと思います。
Morph v1.0 のコンセプトと課題
Morphは2023年12月に、v1.0 としてパブリックアクセスを提供していました。v1.0のコンセプトは、「AIを活用したノーコードデータツール」というもので、特にプロンプトを通じた生成AIによるデータ処理の実行機能にフォーカスしていました。
Morphの長期的なコンセプト、ビジョンについては次の記事をご覧ください。
誰もがデータを扱える、新しいツールを。それを可能にする2つのテクノロジー|Morph
このバージョンでは、次のような体験が可能でした。
- 「顧客をステータスごとに集計して、棒グラフを作って」のようなプロンプトを通じて、データを可視化する
- 「2023年12月31日以前にサインアップしているユーザーのレコードには、 “is2023” というフラグを立てて 」のようなプロンプトでデータを集計する
これらを、自由なレイアウトが可能な「キャンバス」上で操作ができることで、プログラミングの知識がないユーザーであっても、複雑なデータが扱えるようになりました。
しかしながら、このようにAIとノーコードを組み合わせたソリューションには、以下のような課題がありました。
AIが生成した処理が、意図と異なる場合がある
言い換えると、ユーザーの感覚としては「AIの精度が悪い」と感じるようなことがそれなりの頻度であるということです。
この体験を改善するのには、大きく2つの選択肢があると考えていました。
- 精度の改善を地道に頑張る
- AIが生成したものに対して、手を入れたり、フィードバックをできるようにする
1点目に関しては、もちろん努力すべき点ではあるものの、いかなる場合においても100%を達成するのは原理的に困難です。
すると2点目の方針を進めていくのが、現実的な選択であるのですが…
AIが生成した結果を修正するのが大変
Morph v1.0では、データ処理やデータ可視化をプロンプトを通じて生成していたため、生成結果を修正するには、プロンプトを編集する必要がありました。
ちょっとした追加や変更ではそれでも問題ないのですが、処理のロジックに誤りがあったり、データ型 (数値・文字列など) の変更の必要があるような場合には、その指示が複雑になり、人間の言葉で指示をするのがむしろ大変になってしまいました。
ノーコードからローコードへ
実際に「使える」ソリューションであるために、より高い柔軟性を目指して
Morph v1.0を通じて、実際のデータ業務で使えるようなソリューションにするには、様々なケースに対応できる柔軟性とカスタマイズ性、またどのような処理が行われているかという透明性が重要であることが分かってきました。
つまり、AIが生成した結果に対する干渉、すなわちAIとの共同作業をより高いレベルで実現する必要があると考えました。
これを達成するには、ノーコードですべてが完結するというコンセプトは困難で、むしろAIが生成したコードをユーザーが確認、編集できることが必要な要素となります。
このように、実際に業務レベルで使えるソリューションを目指していくためにローコード化することが必要なのではないか考えました。
究極的に柔軟性を与えるには、実行されているコードを編集できるようにすることがそれにあたります。
人間の代替ではなく、人間の拡張。「コードを書かなくていい未来」ではなく「誰でもコードが書ける未来」に賭ける。
他にも、Beta 2に向けての議論の中で「どのような未来に賭けるか」という議題がありました。
プロジェクトの初期に、データの領域でどのように生成AIを活用するかを考えていた時には、「もうエンジニアいらなくなるじゃん!」といったテンションで、その延長からノーコードのコンセプトを実装していました。
しかし、実際の業務で使うとなるとまだまだ課題があります。
実際の業務には様々なエッジケースがあり、完璧なAIを期待するのは筋がいいとは思えませんでした。また、AIからの出力は単純にユーザー入力に依存してしまいます。Morphではデータに関する文脈を与えることで精度の向上を試みていますが、それでも、同じタスクを表現するのにも人によってプロンプトが異なってしまうことは避けられません。
つまり、「常に最高の結果をもたらしてくれる、人材を代替するAI」を目指すより、「業務プロセスに対して最高のサポートをしてくれる、同僚のようなAI」を目指した方がいいのではないか、と考えました。これをMorphの場合に当てはめると、データ処理のためのコーディング部分になります。
「AIが全部やってくれるから、もう誰もコードを書く必要がない」という未来より、「AIが助けてくれるから、とてもハードルが下がって、エンジニアでなくてもコードを触れる」という未来のほうが、もっともらしいと私たちは考えています。