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FinOpsとは?

2024-08-01
坂田 駿介
坂田 駿介
コーポレートマネージャー

FinOpsとは

ここ数年で、FinOpsという概念が話題となっています。 この記事ではFinOpsの概要について、解説をしていきます。 FinOpsとはFinance DevOpsの略語でFinOps Foundationの定義を引用すると、このように記されています。

FinOpsは、クラウドのビジネス価値を最大化し、タイムリーなデータ主導の意思決定を可能にし、エンジニアリング、財務、ビジネスチーム間のコラボレーションを通じて財務的説明責任を果たすための運用フレームワークであり、文化的実践である。 AWS,Azure,GCPを始めとする、クラウドリソースのビジネス価値の最大化を部門横断で実現していくためのフレームワークという理解ができると思います。

FinOpsが注目されている背景

FinOpsが注目されている背景としては、クラウドリソース管理の複雑さが挙げられます。

ここ10年ほどで、クラウドリソースが爆発的に広まり、同時に従量課金という考え方も当たり前になりました。 利用量に応じて価格が上下するため、自動的に価格が最適化されるようなイメージを持つかもしれませんが、そのコストの妥当性の判断・最適化が次第に課題として浮かび上がってきました。

その課題を解決する手段・担当として、これまでの考え方ではコスト管理 = 財務部門 という考え方が当たり前でした。しかしながら、クラウドリソースは数多くのサービスが存在し、それぞれに対して複雑なプライシングが設けられています。 このことから、財務部門ではコストの妥当性の判断が出来ないため、エンジニアリング部門や営業部門との協力体制を構築して、この課題に取り組む必要があるという考え方が広まっていきました。また、2019年にFinOps Foundation という団体が発足され、FinOpsに関しての知見を体系化する動きが出てきました。FinOps Foundationの会員は大企業を中心に5,000社以上となっており、そのネットワークは世界中に広がっています。

さらに、米クラウドコンサル会社 Spot社の調査レポート 2023 State of CloudOps report. によると

  • 96%の担当者がクラウド戦略においてFinOpsを重要と考えているが、9%しか実践できていない
  • 92%の担当者がクラウドコストの削減や予想に苦戦している

という調査結果になっており、課題が顕在化してきており、まさにこれから取り組もうとしている会社が増えてきていることがわかります。

FinOpsにおける6つの基本原則

FinOps Foundationによって、FinOpsにおける6つの基本原則が定義されています。 それぞれ簡単にご紹介します。

コラボレーション

FinOpsは、すべてのチームの効率性の指標としてコストを使用し、財務、IT、エンジニアリングチーム間のコラボレーションを促進するものでなければいけません。

可視性

可視性は、FinOpsのメリットを実現するために不可欠な要素です。 全てのステークホルダーに対して、使用状況と経費について情報を提供し、クラウドコストとビジネスのKPIを紐づけることで、社内ベンチマークを常に確認できる状況を作ることが大事です。

説明責任

クラウドコストと利用状況について可視化し把握することで、各チームメンバーがクラウド管理に対しての説明責任を果たすことができます。

レポーティング

FinOpsを推進するためには、効率的なレポーティングツールを利用することが求められます。 できるだけリアルタイムの状況把握をすることで、迅速な意思決定につながります。

一元化

クラウドリソースにはプロバイダーが存在し、一元管理を行うことでボリュームディスカウントなどの割引を効率的に受けることができます。 こういった割引の活用もFinOpsの一つの役割と言えます。

最適化

クラウドの従量課金モデルを価値提供の機会と捉え、アジャイルにオペレーションを行うことを重視します。 継続的なクラウドシステム設計の調整を行うことで、変動するビジネス環境に対応することが求められます。

FinOps推進のための3つのフェーズ

FinOpsには3つのフェーズが定義されています。 このサイクルを継続的に回していくことが、最適なクラウドコスト管理を実現するために大切です。

情報の共有・可視化

クラウドのコスト、使用状況、効率性に関するデータをステークホルダーに対して共有をするフェーズです。 このデータを割り当て、分析、レポーティングに使用することで、チームは予算編成、トレンド予測、ベンチマーク用のKPIの構築、組織のクラウド支出のビジネス価値を明らかにするメトリクスの開発などに繋がります。

最適化

共有されたクラウドリソースに関するデータをもとに、無駄なリソースはないか、ビジネスの伸びに対して大きすぎるもしくは小さすぎるリソースを使っていないか、など最適化を検討するフェーズです。 また、前のフェーズである可視化、レポーティング、管理プロセスを最適化するためのチーム間の議論もここで行います。

継続

一連の流れを継続的なオペレーションとして運用に落とし込むフェーズです。 クラウドリソースはビジネスの変化に伴い、常に変動しています。一度の見直しでは、この変化に対応できず、場当たり的な対応になってしまいます。 可能な限り自動化をすることで、一連の業務負荷を抑えながら、継続的にオペレーションを回していくことが非常に重要です。

この3つのフェーズを部門間横断で実行していくことが、FinOpsという考え方になります。

FinOpsどこから始めるか

ここまで基本原則やフェーズをご紹介し、FinOpsの輪郭が掴めてきたのではないかと思います。

では、何から手をつけたらいいのか。

まずは、コストデータを持っている財務部門が開発部門に対して情報開示を行うことが、第一歩になるのではないかと考えています。 クラウドコスト管理への課題意識を醸成しなければ、オペレーションではなく、一度の見直しで終わってしまいます。 弊社でも、はじめの一歩としてAWSのコストレポートの作成を始めました。実際にコストレポートを見てもらうと、このリソースは何に使っていたんだっけ?この環境を残しておくのは費用対効果的にどうだろうか、など多くのアイデアがエンジニアから出てきました。 まだまだ始まったばかりの取り組みですが、開発部門を巻き込んだ取り組みにできている手応えを感じています。 具体的な取り組みについては、こちらの記事をご覧ください。