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スポーツ業界にとっての顧客 ID 統合の価値:スポーツにおけるデータ活用 ⑥

2024-07-12
大道 元貴
大道 元貴
セールスデベロッパー

スポーツ業界にとって顧客 ID 統合が難しい理由

プラットフォームが割れがち

スポーツクラブは多くの場合、複数のプラットフォームを使用しており、これが顧客 ID の統合を難しくしています。例えば、チケット販売には専用のシステム、グッズ販売には異なる EC プラットフォーム、クラブ会員管理システム、モバイルアプリなどを使用していることが一般的です。これらのシステムが統合されていないため、データが分散し、顧客の全体像を把握することが困難になります。

さらに、サードパーティのマーケティングツールも多く使用されており、これらのツールが他のシステムと連携していない場合、データの一貫性が失われます。例えば、メールマーケティングツールや SNS 管理ツールが独立して動作している場合、各プラットフォームから得られるデータを統合し、一元化することが難しくなります。このように、プラットフォームが割れていることが、顧客 ID 統合の大きな障害となっています。

データ人材の不足

多くのスポーツクラブにとって、データサイエンティストやアナリストといった専門人材を確保するのは簡単ではありません。こういった人材は、本来取り組むべき顧客データ分析を実行するだけでなく、データを分析することで新たにインサイトを発見することができます。そのため、獲得することができれば非常に価値がありますが、需要が高く、多くの他業界と競合しているといえます。

顧客 ID 統合はどのようにして実現できるのか

顧客 ID 統合は、異なるデータソースから得られた顧客情報を一元化し、統一された ID で管理するプロセスです。

顧客 ID 統合を成功させるためには、まずデータのクレンジングや前処理が不可欠です。クレンジングとは、データの重複や誤記、欠損を修正し、データの一貫性と正確性を確保する作業です。前処理では、異なるデータソースからのデータを統合可能な形式に変換し、共通の ID でリンクします。

ここで問題になるのは、異なるデータソースに保存されたデータ同士の一致を判定するのが難しいということです。それぞれのデータソース上では、顧客に異なる ID が発行されているため、何かしらのデータで同一人物であることを判定しなければなりません。

この同定のロジックはケースバイケースであるため、柔軟な処理が求められます。

Python での処理

Python は、顧客 ID 統合に非常に有効なツールです。豊富なライブラリを持つ Python は、データクレンジングや前処理、データの統合を効率的かつ柔軟に行うことができます。例えば、Pandas ライブラリを使用してデータフレームの操作を行い、異なるデータソースから収集したデータの結合、フィルタリング、クレンジングを容易に行えます。Python の柔軟性と多機能なライブラリを活用することで、顧客 ID 統合のプロセスを効率化し、正確性を高めることができます。

生成 AI の活用

生成 AI は、顧客 ID 統合において大きな可能性を秘めています。例えば、異なるデータソースから取得した名前や住所の類似性を評価し、同一顧客のエントリを識別することができます。異なるプラットフォームに保存されたデータを評価する際には、表記のゆれが起きうるため単純なルールベースのロジックでは難しいタスクです。

Python と AI を兼ね備えた Morph

顧客 ID 統合において、Morph は非常に適したツールです。Morphは、AI の力を利用して、データのクレンジングやリッチ化を自動化する機能を備えています。これにより、データの整備が効率的に行えます。Morph AI は、データパイプラインの構築をサポートし、Python や SQL コードを生成してデータの処理や可視化を行います。Python や SQL は難しいと感じるかもしれませんが、学習リソースは豊富にあることに加え、Morph AI があなたをサポートします。そのため、エンジニアでなくてもPython や SQL を使うようなデータ処理を行うことができます。

さらに、Morph は外部データベースとの連携も可能であり、Snowflake や BigQuery などのデータウェアハウスに接続してデータを取り扱うことができます。また、エラーが発生した場合には自動で修正し、正確なデータ処理を保証します。

これらの機能を活用することで、顧客 ID 統合がスムーズに行え、データの一元管理と高度な分析が実現できます。

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顧客 ID 統合ができたらこんなことができる

ファンエンゲージメントの向上

顧客 ID の統合により、スポーツクラブはファンエンゲージメントを大幅に向上させることができます。例えば、ファンの嗜好に基づいたパーソナライズされたコンテンツを提供することで、ファンの興味を引き続けることができます。特定のファンに対して、彼らが最も関心を持つ試合や選手の情報を優先的に提供することで、ファンの満足度を高めることができます。

また、ファンの過去の行動データを分析することで、彼らの興味や関心を予測し、それに基づいたイベント案内を行うことができます。例えば、特定のファンが過去に複数回特定のイベントに参加している場合、そのファンに対して同様のイベントの案内を送ることで、再度の参加を促すことができます。これにより、イベント参加率の向上が期待できます。

さらに、リアルタイムのインタラクションが可能になります。試合中にファンの反応をリアルタイムで把握し、迅速に対応することで、ファンはクラブとのつながりを強く感じることができます。例えば、試合中に SNS を活用してファンとのコミュニケーションを強化し、ファンエンゲージメントを高めることができます。これにより、ファンは試合をより一層楽しむことができ、クラブへのロイヤルティが向上します。

マーケティング活動の最適化

顧客 ID の統合により、スポーツクラブのマーケティング活動は大幅に最適化されます。ターゲットマーケティングの実現がその一例です。顧客データを一元化することで、各ファンの購買履歴や行動パターンを詳細に分析し、特定のセグメントに対して効果的なマーケティング施策を展開することができます。例えば、頻繁にチケットを購入するファンには、新しい試合やイベントの情報を積極的に提供し、購買意欲を喚起します。

また、クロスセルやアップセルの機会が増加します。例えば、試合のチケットを購入したファンに対して、関連するグッズや VIP パッケージのプロモーションを行うことで、追加の収益を得ることができます。統合された顧客データを活用することで、ファンがどのような商品やサービスに興味を持っているかを把握し、適切なタイミングで提案することが可能になります。

データ駆動型の経営判断

顧客 ID の統合により、スポーツクラブはデータ駆動型の意思決定を行うことができます。統合データに基づくインサイトを経営陣が迅速に得ることで、戦略的な意思決定が容易になります。例えば、チケット販売データやファンの購買履歴を分析することで、適切な価格設定やプロモーション戦略を策定することができます。これにより、クラブの収益を最大化し、競争力を高めることができます。

ファンの生涯価値の最大化

顧客 ID の統合は、ファンの生涯価値を最大化するための強力な手段です。統合データを活用することで、ファンのライフサイクルに応じた適切なアプローチを行い、長期的なファンリレーションシップを構築することができます。例えば、新しいファンにはクラブの魅力を紹介するコンテンツを提供し、既存のファンには特別なイベントやプロモーションを提案することで、ファンのロイヤルティを向上させることができます。

さらに、ファンの生涯価値を最大化するためには、ファンエクスペリエンスの向上が重要です。顧客 ID の統合により、クラブはファンの嗜好や行動を詳細に把握し、ファンの期待に応えるエクスペリエンスを提供することができます。例えば、試合観戦中にファンの好みに合わせた飲食物の提案や、スタジアム内での特別なサービスを提供することで、ファンの満足度を高めることができます。これにより、ファンはクラブとのつながりを強く感じ、長期的なファンリレーションシップを築くことができます。

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ファンにリーチする:FC バルセロナ

FC バルセロナ(バルサ)は、デジタル戦略を刷新し、ファンとの新たな関係構築を目指しています。新たなデジタル戦略には、クラブの収入源の新たな進化が含まれており、今後数年間でデジタル事業がクラブの主な収入源の 1 つとなる予定です。この戦略は、仲介者なしでファンに直接リーチし、ファンの嗜好や習慣をより深く理解し、魅力的なサービスと製品を提供するために、自社プラットフォームの開発と立ち上げに取り組んでいます。

新しいデジタル戦略の中核分野は、世界中の観客の誘致、エンターテインメントとデータ、バルサのデジタル製品のエコシステムの構築です。バルサは、若い観客を引き付けるためにバルサ e スポーツのような新しいプラットフォームやプログラムを活用し、ファンに合わせた質の高いコンテンツを通じてソーシャルネットワークにおけるリーダーシップを強化し、世界中の観客を増やし続けます。

また、エンターテインメントコンテンツの制作とデータの収集および分析を基盤としており、バルサデジタル製品に提供されるエンターテインメントコンテンツを作成する Barça Studios、独自のプラットフォームからデータを収集してファンをより深く理解し、ファンにとって最も関連性の高いものを提供するために使用される FRM(ファンリレーションシップマネジメント)プラットフォームがあります。

バルサの新しいデジタル戦略は、ファンの消費パターンの革命を反映し、競争環境の変化に対応するための取り組みとして、デジタル技術を駆使し、ファンにとって最も関連性の高いものを提供し続けることを目指しています。

Morph 1.0 Barça’s digital strategy creates new relationship with fans in order to adapt to changing consumer habits より引用

Morph がスポーツのデータ活用に対して注目している理由

Morph は、渋谷から J リーグを目指すフットボールクラブ「SHIBUYA CITY FC」と、アスリートデータの活用を共同推進しています。

近年、ビジネスの分野だけでなく、スポーツの分野でもデータ活用がますますトレンドとなり、一般的な概念として浸透しています。アスリートデータを収集するデバイスの進化は目覚ましく、トラッキングシステムやバイオメカニクスセンサーの技術向上により、収集できるデータの量や種類はますます膨大になっています。

しかし、アスリートデータを収集する側のデバイスに比べて、そのデータを効果的に活用するためのソフトウェアはまだまだ発展途上であり、取り組みにおいても余地があります。

この中で、Morph柔軟なデータ活用を可能にするツールであり、収集と活用のギャップを埋めるソフトウェアとして存分に効果を発揮できると考えています。

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