怪我予防や怪我予測にトラッキングデータを活用:スポーツにおけるデータ活用 ⑦
現代のスポーツ現場では、アスリートデータを収集するデバイスの進化が目覚ましく、トラッキングシステムやバイオメカニクスセンサーの技術向上により、収集できるデータの量や種類がますます膨大になっています。ウェアラブルデバイスや GPS トラッキング、モーションキャプチャシステムなどの技術は、選手のパフォーマンスをリアルタイムでモニタリングし、詳細な動作や身体の負荷状況を正確に把握することを可能にしています。
これにより、心拍数や筋肉の疲労度、動作の正確さなど、従来では把握しきれなかった情報が得られるようになりました。この取得可能な詳細で多角的な情報を含む膨大なデータを怪我予防や怪我予測に活用するという取り組みをスポーツチームは始めています。
過密スケジュールの克服:マンチェスター・シティ
マンチェスター・シティは、プレミアリーグ、UEFA チャンピオンズリーグ、国内カップ戦の過密スケジュールを綿密な計画とリソース管理により克服しました。選手の疲労を管理し、怪我を避けるために戦略的なローテーションを実施することで、シーズンを通して選手がフレッシュで活力ある状態を維持することを実現しました。
マンチェスター・シティのスポーツ科学および医療チームは、選手の最高の体調を維持するために、個別にカスタマイズされた筋力とコンディショニングのトレーニング計画、トレーニング負荷管理、回復プロトコルを提供しています。彼らは高度な分析や監視システムを用いて選手のパフォーマンスデータを追跡し、怪我のリスクを評価し、適切な対応を行っています。
さらに、選手ローテーションの実施は怪我予防においても重要な役割を果たしました。グアルディオラ監督は、対戦相手や戦術的状況に応じて選手を起用し、過度の疲労や怪我のリスクを最小限に抑えることで、チーム全体のパフォーマンスを犠牲にすることなく、選手の健康とパフォーマンスを最適化しました。このようにして、マンチェスター・シティはシーズンを通じて安定した成果を上げることができました。
Manchester City’s Quest for Glory: Unravelling The Treble Triumph より引用
選手の健康管理の高度化:ロサンゼルス・ドジャース
ロサンゼルス・ドジャースは、怪我を未然に防ぐためのデータ収集と分析に積極的に取り組んでいます。彼らは新しいテクノロジーとデータ分析手法を駆使して、選手の健康管理を高度化しています。
ドジャースでは、選手が週に 3 回、複数の可動域テストステーション(肩、肘、足首など)を通過します。これらのテストはモーションキャプチャカメラを使用して行われ、詳細な身体データが収集されます。収集されたデータは継続的に監視され、アプリケーションを通じて選手とクラブに通知されます。例えば、筋力や可動域に変化があった場合、その情報がリアルタイムで表示され、必要な対応が迅速に行われます。
Dodgers among teams hoping new system can help prevent injuries より引用
「デジタルアスリート」の開発:NFL
NFL は、AWS と連携して「デジタルアスリート」という AI と機械学習を活用した選手の健康と安全を守るためのツールを開発しました。
「デジタルアスリート」は、プレーヤーのトレーニングや試合中のデータを基に、特定のゲームシナリオを数百万回シミュレートし、どの選手が怪我のリスクが高いかを予測します。これにより、コーチやトレーニングスタッフは、個々の選手に合わせた怪我予防、トレーニング、リカバリープランを策定することができます。
また、この技術は、コンピュータービジョンとビッグデータを組み合わせて、脳震盪などの怪我の発生を自動的に検出し、その原因を解析することも目指しています。これにより、プレーの安全性を高めるための効果的な対策を講じることが可能となります。
NFL のすべてのチームがこの「デジタルアスリート」のデータにアクセスでき、日々のトレーニング量や怪我のリスクに関する情報を取得して、選手の健康管理に役立てています。
Using Artificial Intelligence to Advance Player Health and Safety より引用
怪我予防や怪我予測を実践するには
上記のような怪我予防や怪我予測を実践するには、競技の内容やチームの状況に応じて、様々な処理が必要であるため、柔軟なデータ処理が求められます。このようなデータ処理は、トラッキングデバイスの機能では提供されていないため、トラッキングデバイスからデータを取り出し、分析する必要があります。
Python によるプログラミング
収集されたデータを元に、柔軟なデータ処理を実行するにはプログラミングを用いる必要があります。たとえば、豊富なライブラリを持つ Python は、データクレンジングや前処理、データの統合を効率的かつ柔軟に行うことができます。異なるデータソースから収集したデータの結合、フィルタリング、クレンジングを容易に行えます。Python の柔軟性と多機能なライブラリを活用することで、収集されたデータを怪我予防や怪我予測に活用することができます。
Morph での処理
Morph は、専門的なデータサイエンスの知識がなくても、 Morph AI を用いることで Python を利用したデータの統合、前処理、分析、そしてレポート化を行うことができるので、スポーツチームにとって非常に有用です。
Morph AI は、データ変換や分析の操作方法が分からない場合、コーディングサポートをしてくれるので専門的なデータサイエンスの知識がなくても Python を利用したデータ処理を行うことができます。また、工程が多いデータ処理を行う場合でも AI エージェントに任せることで、プランニングから実行までを一貫して自動実行します。
Morph がスポーツのデータ活用に対して注目している理由
Morph は、渋谷から J リーグを目指すフットボールクラブ「SHIBUYA CITY FC」と、アスリートデータの活用を共同推進しています。
近年、ビジネスの分野だけでなく、スポーツの分野でもデータ活用がますますトレンドとなり、一般的な概念として浸透しています。アスリートデータを収集するデバイスの進化は目覚ましく、トラッキングシステムやバイオメカニクスセンサーの技術向上により、収集できるデータの量や種類はますます膨大になっています。
しかし、アスリートデータを収集する側のデバイスに比べて、そのデータを効果的に活用するためのソフトウェアはまだまだ発展途上であり、取り組みにおいても余地があります。
この中で、Morphは柔軟なデータ活用を可能にするツールであり、収集と活用のギャップを埋めるソフトウェアとして存分に効果を発揮できると考えています。