Hawk-eye, Google, Databricks: MLB のデータ活用を支えるテクノロジー企業たち : スポーツにおけるデータ活用 ②
MLB を支えるテック企業
MLB は最高のリーグパフォーマンスをファンに届けるために、積極的なデータ活用を行っています。試合のプレーや選手の動きを詳細に分析し、そのデータを基に戦略を立て、ファンに新しい視点から試合を楽しんでもらうための努力を続けています。
その裏には、名だたるテクノロジー企業との協力があることはご存知でしょうか?
Hawk-eye: テニスのチャレンジシステムから MLB へ
テニスの「チャレンジ」システムで有名な Hawk-eye は、実はサッカーのゴールラインテクノロジーや、MLB のスタジアムにおけるデータ取得も手がけています。2020 年から、MLB の全ての球場に 12 台ずつの Hawk-eye カメラが設置され、試合中の選手の動きやボールの軌道を高精度で追跡しています。2023 年には、これらのカメラが 300 フレーム/秒のものに置き換えられ、今まで測定不能であったホーム プレート上を通過するバットのヘッドや投球のリリースと接触点をキャプチャします。これは、投手と打者の生体力学的分析を可能にし、野球選手がどのようにして驚異的な技を繰り出せるのかを説明することに繋がります。
実は、Hawk-eye はソニー傘下の企業であり、ソニーのデジタルエクスペリエンスや光学システムの技術を活用して、MLB におけるデータ収集を支えています。
ソニーグループポータル | 可視化のテクノロジーでスポーツの感動を支える、 Hawk-Eye Innovations and MLB Introduce Next-Gen Baseball Tracking and Analytics Platform より引用
Google: データ基盤を支えるクラウド技術
収集されたデータは、Google Cloud Platform(GCP)に保管され、各球団やファンが利用できるようになっています。かつては AWS がこの役割を担っていましたが、現在では GCP に取って代わられています。 このシステム全体のことを Statcast と呼び、MLB は Statcast を通じて新たなファンコンテンツを生み出しています。
リアル x デジタルのハイブリッド体験
MLB のデータ活用とファン体験の進化を語るトーク動画の中で、MLB のテクノロジー・インフラストラクチャ担当シニア・バイス・プレジデントである Truman Boyes 氏は、「球場に足を運んでいる人たちにとってもデジタルの体験は重要。いわばハイブリッドな状態で、球場で試合を見ながらも、スマートフォンでリプレイを見ている。」と述べています。球場にいる人にとってもデジタル体験が重要というのは、非常に興味深い洞察だと思います。
コアファンに向けたより深い理解の提供
MLB の公式オフィシャルサイトでは、Statcast 上の膨大なデータを様々な指標で閲覧することができます。ファンは、選手やチームの詳細なパフォーマンスを楽しむことができ、より深い理解を得ることができます。ここで注目したいのがデータを CSV 形式でエクスポートできるという点です。連載第一回でも紹介した Laliga の Beyond stats や J リーグのスタッツページでも選手やチームのスタッツを閲覧することができますが、エクスポート機能はありません。エクスポート機能があることで、自分なりの仮説を検証、パフォーマンスの追跡、特定の選手やチームに焦点を当てた独自のレポートの作成、グラフやチャートを用いたデータの可視化などを可能にし、ファン自身もチームのデータ分析班として試合に参加しているような体験を提供することができます。
statcast_leaderboard より引用
データ x 映像
また、Statcast 上のデータと映像データを組み合わせて、単なるハイライト映像ではなく、その場面の状況をデータで分かりやすく伝える映像プラットフォームも提供しています。この映像プラットフォームは、プレイの背景にある選手の動きを詳細に分析し、ファンにとって非常に興味深いコンテンツとなっています。
3-pitch K, then a HR! Skenes-Ohtani battle features 'big on big' より引用
Databricks: データ活用とコラボレーションのためのソリューション
Databricks は、球団がデータの活用やコラボレーションを行うのに典型的なソリューションとなっています。Databricks のプラットフォームは、リアルタイムなデータの取得・分析を可能にし、ゲーム中の判断や作戦立案に大きな力を与えたり、コーチやアナリストが選手のバイオメカニクスデータを解析し、選手のパフォーマンス向上やケガの予防に役立てたりすることができます。これにより、より精緻な戦略と選手管理が可能になり、チームの競争力を高めることができるのです。
MLB に所属するチームは国内外を問わずプロリーグとマイナーリーグにまたがり、選手数は 6,000〜7,000 人に上るとされています。この膨大な選手のデータを組織の分散に関係なく、データエンジニア、データサイエンティスト、データアナリストなどのコラボレーション環境を提供します。
Cracking the Code: Databricks がバイオメカニクスデータでメジャーリーグを再構築する方法 より引用
Morph がスポーツのデータ活用に対して注目している理由
Morph は、渋谷から J リーグを目指すフットボールクラブ「SHIBUYA CITY FC」と、アスリートデータの活用を共同推進しています。
近年、ビジネスの分野だけでなく、スポーツの分野でもデータ活用がますますトレンドとなり、一般的な概念として浸透しています。アスリートデータを収集するデバイスの進化は目覚ましく、トラッキングシステムやバイオメカニクスセンサーの技術向上により、収集できるデータの量や種類はますます膨大になっています。
しかし、アスリートデータを収集する側のデバイスに比べて、そのデータを効果的に活用するためのソフトウェアはまだまだ発展途上であり、取り組みにおいても余地があります。
この中で、Morph は柔軟なデータ活用を可能にするツールであり、収集と活用のギャップを埋めるソフトウェアとして存分に効果を発揮できると考えています。